しめさばブログ

介護士で子ども3人の親。ブログやウェブライティングなどの副業を模索しながら生きています。

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我が施設の最高齢者から学ぶこと

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「博士の愛した数式」という小説がある。映画化もされた。

『「私」が家政婦として派遣された家に住んでいた老人。彼の記憶は80分しか持たず、その時その時に初めてがやってくる。』


映画【博士の愛した数式】

 

 我が施設の最長老様は100歳超えなのに元気。シルバーカーを押して、ゆっくりだけど歩いて移動する。僕が居るユニットは利用者40名で、歩行で移動してる方は3名しか居ない。

ベッドに腰掛ければ靴下だって自分で履ける。ものすごくしっかりしてる、体は。

でも認知症があり、脳の記憶容量がものすごく少ない。

トイレにお連れし、座ってもらう。2分後に迎えに行くと

「あ、おはようございます。」

たぶん1分後には僕のこと忘れてる模様。

「博士」の80分どころじゃない。

とにかく記憶が続かない。

なんだか昔の事や家族の顔は覚えてるみたいだけど、それも定かじゃない。いつも笑ってるだけ。

尚、本人は全然悲観的に思わない。記憶が続かないから。

いつも笑顔で、発する言葉がいちいちポジティブ

「明るいところだね~」

「立派なところだ~」

「賑やかなところだ~」

毎食ご飯を食べている食堂に来るたび、初めて来たかのように新鮮に、ただ嬉しそう。

着ている服の裏側をめくって、そこに書いてある自分の名前を見つけては、「ほら、こんなところに最長 老子って書いてあるね~。」と職員に教えてくれる、毎日。

テーブルの上にあるボックスティッシュの字を読んで、「エルモヤ~だと。」と言って笑ってる、毎日。

 

エルモア ティシュー 400枚(200組)×5個

※注:商品名エルモア

 

遠くに吊るしてある季節の飾りを指さして、「ほらあれ、なんだ~?立派だね~。」とやっぱり笑ってる。目もいい。

とにかくポジティブ。心の内面からポジティブ。

それが長生きの秘訣なんだろう。

 

心の持ちよう一つ。

常にポジティブに考える癖がついていれば、たとえ認知症になったとしても毎日笑って過ごすことができる一つの例だと思う。

ロボットじゃないんだから、誰でもそんな上手く年を重ねるのは難しいのだけれど。

普段、利用者さん達が口にするのはネガティブな事ばかり。

「家に帰りたい。」「お金無いの。」「左の腰が痛いよー。」

我々もなかなか手が回らなくて、みんなに手を掛けてあげたいけど、それができず申し訳なく感じてる。

そんな中で一人笑ってる最長老様。

毎日読んでる絵本をめくりながら、そこに描いてある絵を指さして何やら喜んでる。

「あなた昨日もその本読んでましたよね。」

なんて無粋な言葉を掛ける職員は居ない。

最長老様と一緒にかわいらしいウサギやキツネの絵を見て、一緒に微笑んじゃうから。

 

記憶は続きません。でも、目に入るものすべてが新しく、そして嬉しい。

究極の「幸せな老後」だよね。

 

終わり。